
「リスティング広告のキーワード選定について調べている」
「キーワードの適切な選定方法や適正な数がわからない」
この記事はそのような方向けに書いています。
こんにちは、社長兼マーケターの中釜です。
運用型広告に携わり13年になりますが、リスティング広告のキーワード選定についての情報を探している方が多かったので記事にしました。
結論から言うと、リスティング広告のキーワード選定において何より大切なのは成約につながりやすいターゲットに届けられているかどうかです。
インテントマッチで幅広いユーザーに対するリーチが容易になった現在の広告運用においては、キーワード選定に加えて配信データを見極めながらのキーワード運用も重要性を増しています。
本記事ではキーワード選定の手順だけでなく以前と現在における違い、キーワード運用のポイントについても解説しています。
- 本記事のポイント
-
- キーワード選定の現状について正しく理解する
- キーワード運用におけるポイントと注意点を把握する
ピンポイントで知りたい方は、以下の目次から見たい項目をクリックすると便利です。
それでは解説していきます。
キーワード選定の現在
キーワード選定の現在について、以下の3点から解説していきます。
1. 以前と現在との違い
かつてのリスティング広告では、検索キーワードの選定が成果を大きく左右し、網羅的にキーワードを設定することが重要視されていました。
釣りに例えるなら、釣り糸(キーワード)をたくさん垂らせば、それだけ魚がかかる可能性が高まるという考え方で、掛け合わせのバリエーションや誤字・表記揺れを含めたあらゆる検索パターンを想定し、細かく設定する必要がありました。
現在ではインテントマッチの導入により広告は単なるキーワードの一致ではなく、検索意図を読み取って配信されています。
「多くの糸を垂らす」のではなく、「大きな網(インテントマッチ)を使って釣りをする」ようなイメージに変わったことで、従来のような細かなキーワード設定は不要になり、より広範囲の検索意図を自動でカバーすることが可能です。
2. 現在のキーワード選定の役割
ユーザーの検索意図は媒体側が汲み取って配信するため、掲載範囲は媒体のさじ加減となり、配信してみるまで掲載範囲を把握することが難しくなりました。
キーワード選定の時点ですべての検索パターンを網羅することよりも、キーワード選定はあくまでも「仮説」として設定し、配信後のデータをもとに最適化を進めることがより重要になっています。
「網をどこに設置するか」が成果を大きく左右するため、配信した広告が適切なターゲットに届くようにキーワードだけでなく、配信地域・デバイス・時間帯・オーディエンスデータなどを組み合わせてターゲティングの精度を高めることが求められています。
インテントマッチによって幅広い検索意図に対応できる一方で、適切な設定をしないと無関係なユーザーに対して広告が配信されてしまう可能性が高いため、運用の工夫が必要です。
3. 実際にどのように運用するのか
広告運用においてキーワード設定後、配信後の検索語句データを分析し、継続的に下記の業務をおこないながら広告を最適化することが重要です。
【キーワードを軸にした広告運用業務】
- 検索語句の確認
- キーワードの精査
- 除外キーワードの設定
- ターゲティングの調整(配信地域・デバイス・時間帯・性別など)
- リンク先の改修
- 広告文の修正
検索語句は「適切なターゲットに配信できているか」「ユーザーが何を求めているのか」「どうすればより効果的な訴求が可能になるか」を見極める上の土台となります。
配信結果を確認しながら、無関係の流入に対しては除外キーワード等で絞り込みをおこない、関連性の高いユーザーに対してはリンク先や広告文の修正によって訴求力を高める運用をおこないます。
現在のリスティング広告運用では「釣り糸を増やす」のではなく「網を適切な場所に設置する」ために、配信結果をもとにした適切な調整が欠かせません。
選定方法①:ツールを使用
キーワードの選定方法にはツールを使用する方法と、キーワード候補から選択する2つのやり方があります。
まずはツールを用いて商品やサービスに関連する検索語句を事前に調査して設定する方法について、キャットフードの会社を例に解説していきます。
手順①:軸となるキーワードを決める
取り扱う商品・サービスを一言で表す語句やフレーズをひとつ決めます。
今回の例はキャットフードの会社なので軸となるキーワードは必然的に「キャットフード」になります。
手順②:キーワードプランナーを活用する
キーワードプランナーとは、軸となるキーワードに関連する語句を探すことができるGoogle広告の機能です。
【キーワードプランナーの使い方】
- Google広告の管理画面にログインする
- 左メニュー[ツール]>[プランニング]タブ >[キーワードプランナー]を選択する
- [新しいキーワードを見つける]を選択する
- [キーワードから開始]タブ >軸となるキーワードを入力する
- [結果を表示]を選択する
- 軸となるキーワードに関連する語句の一覧を確認する
- 画面右上の[キーワード候補をダウンロード]>[.csv]を選択する
【ダウンロードしたエクセルからキーワードを取捨選択する】
続いてダウンロードしたエクセルファイルから使いたいキーワードを選び出します。
「キャットフード」でキーワードプランナーから約1,000個のキーワード候補を抽出できましたが、今回は5キーワードに絞って解説します。
○:入れる、△:状況による、×:入れない
No | キーワード | 選定 | 理由 |
---|---|---|---|
1 | キャットフード おすすめ | 〇 | キャットフードに関連する キーワードのため入れる |
2 | キャットフード 市販 | 〇 | キャットフードに関連する キーワードのため入れる |
3 | キャットフード 人気 | 〇 | キャットフードに関連する キーワードのため入れる |
4 | キャットフード グレインフリー | △ | グレインフリーのキャットフードを 扱っている場合は入れる |
5 | キャットフード 発がん性 | × | 「発がん性」はネガティブ キーワードのため入れない |
手順③:ラッコキーワードを活用する
ラッコキーワードというサイトからはサジェストキーワードを調べることができます。
ラッコキーワード:https://related-keywords.com/
上部の検索欄に軸となるキーワードを打ち込むと、下図のようにサジェストキーワードが表示されます。
左上の10キーワードに関してはよく検索されるキーワードなので、検索キーワードに追加します。
キーワードプランナー同様、どのように取捨選択するか解説します(キーワードは全部で10個ありますが、5つに絞って解説しています)。
○:入れる、△:状況による、×:入れない
No | キーワード | 選定 | 理由 |
---|---|---|---|
1 | キャットフード | 〇 | 軸となるキーワード のため入れる |
2 | キャットフード 安全 | 〇 | キャットフードに関連する キーワードのため入れる |
3 | キャットフード 通販 | 〇 | キャットフードに関連する キーワードのため入れる |
4 | キャットフード ロイヤルカナン | △ | 競合キーワードを含む場合 入れないを推奨 |
5 | キャットフード 歌詞 | × | 初音ミクの歌に関するキーワードで 無関係のため入れない |
以上がキーワードプランナーとラッコキーワードからキーワードを抽出する手順です。
手順④:マッチタイプを設定する
キーワードの抽出が完了したら次はマッチタイプを設定します。
マッチタイプの詳細について知りたい方は下記の記事をご参考ください。
» 【2025年最新】Google広告のマッチタイプ完全ガイド
【マッチタイプの種類】
- インテントマッチ(旧:部分一致)
- フレーズ一致
- 完全一致
マッチタイプによってキーワードの範囲やかかる費用も変わってきます。
現在はインテントマッチの設定が推奨されており、どのマッチタイプを使用するかなどの細かな設定分けは不要になっています。
手順⑤:除外キーワードを洗い出す
現在の推奨のマッチタイプであるインテントマッチではどうしても無関係なユーザーが流入してしまうため、除外キーワードの設定が重要です。
ネガティブキーワードや無関係のキーワードに対して広告を掲載しないようにします。
除外キーワードは後から追加で設定することも可能です。
→広告が表示されない検索語句の例:キャットフード 悪評
管理画面から検索語句を確認して、以下に当てはまる語句を除外します。
【除外キーワードとして設定すべきもの】
- キャンセルや返品などのネガティブキーワード
- 競合他社
- 広告と無関係のキーワード
ネガティブキーワードは必ず除外するようにして、無関係のキーワードについては定期的に除外するとよいです。
検索キーワードよりも除外キーワードのほうが多くなることを目指し、コツコツと追加することで無駄な流入を防ぎ、キーワードの精度向上を目指します。
除外キーワードの選定や設定方法などを知りたい方は下記の記事をご参考ください。
» 除外キーワードとは?マッチタイプや設定方法について詳しく解説
選定方法②:キーワード候補から選定する方法
広告運用が初心者の方やツールで調査する時間がない方は、Google管理画面内のキーワード候補から選定することも可能です。
- Google広告の管理画面にログインする
- 左メニュー[作成]ボタン >[キャンペーン]を選択する
- 単価設定/キャンペーン設定のすべての項目を入力する
- キーワードと広告 > キーワード > キーワード候補を取得(省略可)> キーワードのスキャンに使用するURLを入力 > 広告掲載先のURLを入力する
- [キーワード候補の取得]ボタン > 提案されたキーワード候補25個から選定をおこなう
- さらに候補を取得したい場合、キーワードをさらに追加 >[表示]> 約170個のキーワード候補から選定をおこなう
全部で200個ほどのキーワード候補を提案してくれますが、関連性の低いキーワードが含まれていることもあるため、確認することをおすすめします。
- 設定しないキーワード候補例
-
- 配信エリアにあっていないキーワード
- 自社サービスや商品と関連性が低いキーワード
キーワード設定における注意点
リスティング広告のキーワードで注意するポイントについて3点解説します。
注意点①:関連性の高いキーワードを設定する
インテントマッチの掲載範囲は広いため、関連性の低いキーワードで設定してしまうと、さらに関連性の低い語句にまで掲載されてしまう可能性があります。
キーワード選定はあくまでも「仮説」ではありますが、関連性の高い語句のみを設定して配信する必要があります。
【キャットフードに対する関連性の例】
キャットタワー おすすめ:関連性が低い
注意点②:同じ検索意図のキーワードを複数設定しない
現在Google広告ではキーワードの類似パターンという機能が実装されているため、下記の例のような同じ検索意図のキーワードは1つのキーワードにまとめます。
- まとめるべきキーワード例
-
- 語順の違い:キャットフード 通販と通販 キャットフード
- 表記の違い:引越しと引っ越し
最適化案の自動適用設定で「重複するキーワードを削除しましょう」にチェックが入っていれば、Google広告が重複を自動で管理してくれます。
注意点③:マッチタイプは1つにまとめる
以下のように異なるマッチタイプで同じキーワードが重複している場合はGoogle広告推奨のインテントマッチにまとめます。
同じ検索意図・マッチタイプでキーワードが重複していると管理コストがかかる上、データが分散して機械学習の妨げとなるため注意が必要です。
配信開始後のキーワード運用におけるポイント
キーワードは一度設定したら終わりではなく、配信開始後も広告の反響を反映して調整していくことが大切です。
ポイント①:最適化案を確認する
Google広告管理画面内の最適化案では、表示回数やクリックが見込めるキーワード提案がされているため、キーワードを精査した上で追加することでより多くのターゲットに広告を表示させることができます。
表示回数やクリック数のデータが多いほどアカウントの機械学習も進むため、管理画面の最適化案を定期的に確認して関連性のあるキーワードを追加します。
【検索キーワードの運用ポイント】
最適化案では実際にGoogle広告からの検索キーワードの提案を確認できるので、下記2点を定期的におこなうことをおすすめします。
- 関連性のあるキーワード→検索キーワードとして設定する
- 関連性のないキーワード→設定しない
ポイント②:最適化案の自動適用を活用する
最適化案の自動適用を適切に設定することで、広告効果の上がる検索クエリの追加などが自動でおこなわれます。
チェックを入れることを推奨する項目は以下となります。
【チェックを入れる項目(推奨)】
- 重複するキーワードを削除しましょう
- 広告配信に使われていないキーワードを削除しましょう
- 競合する除外キーワードを削除する
- 最適化されたターゲティングを使用する
- 新しいキーワードを追加しましょう
- インテントマッチキーワードを追加する
設定手順は以下となります。
【自動適用の設定方法】
- Google広告の管理画面にログインする
- 左メニュー[最適化案]>[自動適用]を選択する
- 広告のパフォーマンスを維持する > キーワードとターゲティング > 4項目すべてを選択する
- ビジネスを拡大する > キーワードとターゲティング >[新しいキーワードを追加しましょう]および[インテントマッチキーワードを追加する]を選択する
- [保存]ボタンを選択する
一部の商材やサービスは推奨のマッチタイプであるインテントマッチではなく、フレーズ一致や完全一致を設定する場合もあります。
- インテントマッチが最適でない例
-
- 非常に限られた層をターゲットにしている商品
- BtoB向けの広告
ポイント③:除外キーワードを定期的に追加する
Google広告において、広告掲載機会を広げる場合は比較的自動化がしやすく、配信ユーザーを狭める場合は手動でおこなうことが多いです。
キーワードにおいても、検索クエリからのキーワード追加は最適化案の自動適用からおこなえますが、無関係なユーザーの流入を防ぐ除外キーワードの設定は基本的に手動でおこなう必要があります。
無駄な掲載を減らすことで広告の費用対効果が大きく改善するため、除外キーワードの追加は配信開始後の重要な運用の1つです。
【Google広告運用の特徴】
- 掲載機会を増やす運用→自動化することが多い
- 無駄な掲載を防ぐ運用→手動でおこなう場合が多い
ポイント④:キーワードは多ければよいというものではない
キーワードは多ければ多いほどよいというわけではありません。
インテントマッチでキーワードを設定すればAIが自動で幅広い配信をおこなう現在では、例えば他社が設定していないであろうキーワードをたくさん設定する以前のような戦略は効果的でないことが少なくありません。
さらに、キーワードを増やすほど関心の低いユーザーの流入が増えることで費用対効果が悪化するなど、かえって逆効果となる場合もあります。
以上の流れを踏まえると、現在はキーワードを多く設定することだけに気を取られずに、ランディングページやリンク先、アカウント設計など幅広い視点を持って運用することが重要です。
キャンペーン・広告グループ・広告・アセット・コンバージョントラッキングなどを最適化し、機械学習を最大限活かせるアカウント設計を目指します。
アカウント設計については以下の記事で詳しく紹介しています。
» リスティング広告のアカウント構成とは?効果的な設計方法や注意点を解説
【キーワードの多さが重要でない理由】
- AIの活用により、キーワードの配信範囲が広がった
- キーワードを増やすと費用対効果が悪化するなど、逆効果となる場合もある
- ランディングページやリンク先、アカウント設計など幅広い視点が重要
まとめ
本記事では、リスティング広告におけるキーワード設定手順、注意点と運用におけるポイントを解説しました。
本記事をまとめると下記のとおりです。
- 本記事のまとめ
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- リスティング広告のキーワード選定において何より大切なのは成約につながりやすいターゲットに届けられているかどうか
- 配信地域・デバイス・時間帯・オーディエンスデータなどを組み合わせてターゲティングの精度を高めることが求められる
- キーワードの選定方法にはツールを使用する方法と、キーワード候補から選択する2つのやり方がある
- インテントマッチの掲載範囲は広いため、関連性の低いキーワードで設定してしまうと、さらに関連性の低い語句にまで掲載されてしまうため注意
キーワード運用は最初から完璧にする必要はなく、配信しながら追加や除外キーワードの設定をおこない精度を上げていくことができます。
以前のように手作業でたくさん設定すればするほどよいわけではなく、インテントマッチで広く配信しながら機械学習をうまく活用することが重要になったという変更点を踏まえ、本記事を参考に運用を見直してみてください。
というわけで今回は以上となります。