「リマーケティングの効果を改善したい」
「リターゲティング広告効果を見直すためにすべきことは何か」
この記事はそのような方向けに書いています。
こんにちは、社長兼マーケターの中釜です。
運用型広告に携わり12年になりますが、リマーケティングの改善施策を探している方が多かったので記事にしました。
Googleは2025年初頭からサードパーティCookieを段階的に廃止する計画を進めていましたが、サードパーティCookieの完全廃止を実施しないことを再度発表しました。
直近でリターゲティング広告の効果が下がってしまうことやコンバージョントラッキングの精度が下がる懸念は一旦解消されましたが、ブラウザの環境や個人情報の取扱いについては、今後も規制が厳しくなることが予想されます。
サードパーティCookieとよく混同してしまいがちな用語を整理しました。
【用語の整理】
- サードパーティCookie:訪問サイト以外の第三者が設定するクッキーで、広告ネットワークや解析ツールがユーザー行動を追跡するために利用する。
- ファーストパーティCookie:訪問したウェブサイトが設定するクッキーで、ログイン情報を記憶するために使われる。
- ファーストパーティデータ:企業やウェブサイトが直接収集するデータ。
リターゲティング広告の効果改善施策の解説だけでなく、間違いやすいポイントについても書いているので、効果を改善したい方にもすぐに実践できる内容になっています。
リマーケティングの基礎や仕組みについて知りたい方は「【完全版】リマーケティングとは?基礎や仕組みを分かりやすく解説」をご確認ください。
ピンポイントで知りたい方のために目次を記載していますので、見たい項目をクリックすると便利です。
【目次】
それでは解説していきます。
1. GTMタグを正しく設置する
現在GTMを使用してGooole広告を配信している方が増えていますが、GTMタグの設置箇所や設置ページを間違えていることは少なくありません。
GTMタグを正しく設置できていないと、リマーケティングだけではなく、コンバージョン計測にも影響が出てしまいます。
GTMタグは2種類あり、それぞれ設置箇所のルールがあるため注意が必要です。
【headタグ用】
<script>(function(w,d,s,l,i){w[l]=w[l]||[];w[l].push({‘gtm.start’:
new Date().getTime(),event:’gtm.js’});var f=d.getElementsByTagName(s)[0],
j=d.createElement(s),dl=l!=’dataLayer’?’&l=’+l:'';j.async=true;j.src=
‘https://www.googletagmanager.com/gtm.js?id=’+i+dl;f.parentNode.insertBefore(j,f);
})(window,document,’script’,’dataLayer’,’GTM-○○○○○○○’);</script>
<!-- End Google Tag Manager -->
- 設置箇所:headタグ内のなるべく上のほう
- 設置ページ:すべてのページ
【bodyタグ用】
<noscript><iframe src="https://www.googletagmanager.com/ns.html?id=GTM-○○○○○○○"
height="0" width="0" style="display:none;visibility:hidden"></iframe></noscript>
<!-- End Google Tag Manager (noscript) -->
- 設置箇所:bodyタグの直後
- 設置ページ:すべてのページ
タグは抜け漏れおよび設置箇所のミスがないようにご設置ください。
2. GTMのタグとトリガーを正しく設定する
GTMタグを正しく設置したら、GTMの設定も正しくおこなう必要があります。
GTMの設定は大きく分けてタグとトリガーの2種類があり、特に間違いやすいのはトリガーの設定です。
【間違いが起こりやすいポイント①:トリガー】
- トリガーのタイプを正しく設定できていない:コンバージョンの計測方法が「クリック」か「ページの読み込み」かでトリガータイプが変わる。
- トリガーの条件とURLを正しく設定できていない:「含む」or「等しい」、URLの指定の間違いが起こりやすい。
サイトリニューアルの際に、サンクスページURLが変更される場合があります。
トリガーに指定しているURLの変更を失念してしまい、コンバージョン計測ができなくなることがあるため、注意が必要です。
トリガー以外で間違いやすい項目は下記2点です。
【間違いが起こりやすいポイント②:その他】
- タグとトリガーを設定完了後に「公開」できていない:変更を加えた後に公開ボタンを押し忘れてしまうと未反映になる。
- コンバージョンリンカーを設定できていない:Google広告経由であることを記録するもので、設定をしないと正確なコンバージョン計測が不可能。
3. カスタマーマッチを活用する
カスタマーマッチは、広告主が自社の顧客データベースから収集したオフラインのデータ(例:メールアドレス・電話番号など)をGoogle広告にアップロードし、そのデータをもとに特定のユーザーに広告を配信したり、アカウントの機械学習に活用するための機能になります。
顧客データファイルの項目は以下のとおりです。
【顧客データファイルの項目内容】
- メールアドレス
- 電話番号(国コードを含める)
- 姓
- 名
- 国コード(JP)
- 郵便番号
顧客データファイルのアップロード方法は以下のとおりです。
- Google広告の管理画面にログインする
- 左メニュー[ツール]タブ>[共有ライブラリ]を選択する
- [オーディエンスマネージャー]を選択する
- データセグメントの[+]ボタン>[顧客リスト]を選択する
- [ファイルを手動でアップロードする]を選択する
- [続行]を選択する
- アップロードするデータの[参照する]を選択する
- [該当の顧客データファイル]を選択する
- [リストをアップロードして作成]を選択する
4. 最適化されたターゲティングをオンにする
最適化されたターゲティングとは、Google広告の推奨設定で、広告主様のキャンペーン目標に基づいてコンバージョンの可能性が高いと判断したユーザーに広告を配信する機能です。
ディスプレイキャンペーンや特定の目標における動画キャンペーンに利用でき、広告がより関連性の高いユーザーに届くようになります。
(参照:About optimized targeting – Google Ads Help)
【運用事例】
下記は、リマーケティング広告のターゲティング別の配信結果で、「サイト訪問ターゲティング(①)」と「最適化されたターゲティング(②)」の弊社実績になります。
CV | CPA | 表示回数 | セッション数 | コスト | |
---|---|---|---|---|---|
① | 47 | 16,716 | 2,419,687 | 7,004 | 785,696 |
② | 70 | 17,804 | 3,980,288 | 6,159 | 1,246,274 |
- 考察
-
- 表示回数:①2,419,687回、②3,980,288回(164.5%)になり、最適化されたターゲティングに偏る結果となった。
- CPA:①16,716円、②17,804円になり、大きな差はない結果となった。
5. レスポンシブディスプレイ広告の画像を見直す
レスポンシブディスプレイ広告とは、1種類の広告を設定するだけで「サイズ」「フォーマット(テキスト、イメージ、ネイティブ)」を網羅できる広告フォーマットです。
レイアウトは、入稿した6個のアセットの組み合わせで決まり、画像はレスポンシブディスプレイ広告の構成要素の中で最も重要な要素です。
配信を開始してから下記のポイントを見直すと効果改善につながります。
画像:見直しポイント | |
---|---|
詳しくは以下の公式ヘルプページをご参考ください。
(参照:ディスプレイ広告:クリエイティブ作成時のおすすめの方法に関するガイド – Google広告ヘルプ)
6. レスポンシブディスプレイ広告の文言を見直す
掲載面に合わせて自動でサイズやデザインを最適化してくれるレスポンシブディスプレイ広告を見直すことで効果的に広告を配信できます。
配信を開始してから下記のポイントを見直すと効果改善につながります。
文言:見直しポイント | |
---|---|
詳しくは以下の公式ヘルプページをご参考ください。
(参照:効果的なディスプレイ広告作成のヒント – Google広告ヘルプ)
【補足:6個のアセット】
- 広告見出し
- 長い広告見出し
- 説明文
- 画像
- ロゴ
- 動画
詳しくは以下のブログで詳しく解説しています。
» 【完全版】レスポンシブディスプレイ広告の基礎とメリットを解説
7. コンバージョンユーザーを除外する
コンバージョンを計測していることが条件になりますが、コンバージョンユーザーへの配信を除外することができます。
既にコンバージョン済みのユーザーからの無駄インプレッションを防ぐようにします。
コンバージョンユーザーを除外する設定は、以下の方法になります。
- 該当のリマーケティングキャンペーンを選択する
- 左メニュー[オーディエンス、キーワード、コンテンツ]を選択する
- [オーディエンス]を選択する
- [除外]>[オーディエンスの除外]を選択する
- [閲覧]タブ >[ユーザーがお客様のビジネスを利用した方法]を選択する
- [ウェブサイトを訪れたユーザー]を選択する
- [コンバージョンに至ったすべてのユーザーのリスト]を選択する
8. プレースメントを精査する
プレースメントとは、ディスプレイ広告やリマーケティング広告において広告が表示される場所やメディアのことを指します。
特定のウェブサイト(まとめサイト・ブログ・ニュースサイトなど)やスマホアプリ内の広告枠(情報アプリの記事内・ゲームアプリの画面内など)が挙げられます。
プレースメントを精査する理由は2つあります。
【プレースメント精査の理由】
- 悪質なコンバージョンが発生している可能性がある
- 誤タップを誘発する設計のアプリやウェブサイトがある
1点目は、悪質なコンバージョンが発生している可能性があることです。
現在自動入札が主流となり、自動でクリック単価が調整されていますが、悪質な場合、自らコンバージョンを発生させることで、クリック単価を釣り上げる場合があります。
自発コンバージョンは全体のパフォーマンスに悪影響を与え、実際の機械学習の質を悪化させる原因となります。
実際に収益に結びつくコンバージョンかを確認し、質の低いプレースメントを排除するための定期的な見直しが必要です。
2点目は、誤タップを誘発する設計のアプリやウェブサイトがあることです。
広告をクリックしてもらえるように設計されているアプリやウェブサイトでは、意図しない広告の誤タップ(無駄クリック)が起こりがちです。
アプリの収益化(マネタイズ)には、大きく2つの種類があり、特に非課金型アプリでは誤タップが起きやすいためプレースメントの精査が必要です。
【補足:アプリの収益化(マネタイズ)】
- 課金型アプリ:アイテムなどを購入して収益を上げる
- 非課金型アプリ:アプリ内に広告を掲載して収益を上げる
費用対効果を改善したい場合は、質の低いプレースメントやアプリ配信を除外するのが賢明です。
9. バナー広告のデザインを変更する
ディスプレイ広告にはレスポンシブディスプレイ広告のほかにバナー広告があります。
【用語の整理】
- バナー広告:正式名称はイメージ広告で、画像1枚と最終ページURLで構成される。入稿サイズに適した配信面に広告が掲載される。
- レスポンシブディスプレイ広告:複数の画像や文言を設定し、Googleが掲載面に最適な形に組み合わせて掲載する。
リマーケティングは、以前訪れたことのあるサイトであることを認識してもらうため、バナーデザインが重要といえます。
社名・ブランドロゴを強調したり、誘導ボタンや訴求内容のデザインを工夫する必要があります。
効果的なクリエイティブの要素は主に4つです。
- 会社のロゴ:会社名もしくはロゴを記載
- メインイメージ:写真もしくはイラストでわかりやすいもの
- メインコピー:なるべく目立つ位置に大きな文字で
- 誘導ボタン:『詳しくはこちら』などのボタン
【運用事例】
下記は弊社の運用事例で、バナーデザインを変更した前後の結果です。
CV | CPA | 表示回数 | セッション数 | CTR | |
---|---|---|---|---|---|
バナーA | 6 | 12,790 | 361,057 | 539 | 0.15% |
バナーB | 3 | 22,498 | 399,041 | 693 | 0.17% |
バナーデザインを変更してもCV・CPAともに成果は改善しませんでしたが、CTRが若干改善しました。
もし、クリック率が低い場合は、クリエイティブのデザインの変更を検討したほうがよいかもしれません。
以下の記事でバナー広告の効果的なデザインについて詳しく解説しているので参考にしてください。
» 【GDN・YDA】バナー広告の効果的なデザイン:事例解説付き
10. バナー広告のサイズの種類を増やす
GDNには規定のバナーサイズがあり、サイズが多いほどインプレッション数を増やすことができます。
【運用事例】
下記は弊社の運用事例で、バナーサイズを1種類にて配信をおこなった結果とサイズを20種類にして配信した結果です。
CV | CPA | 表示回数 | セッション数 | コスト | |
---|---|---|---|---|---|
1種類 | 15 | 20,094 | 2,112,225 | 1,819 | 301,413 |
20種類 | 17 | 17,520 | 862,669 | 1,278 | 297,848 |
全20種類のバナーサイズを登録し、表示回数は減少しましたがコンバージョン数は増加しました。
効果的だったバナーサイズは下記のとおりです。
【効果の良いバナーサイズ】
- 300×250
- 336×280
- 300×600
詳しくは以下のブログで詳しく解説しています。
» 【2024年最新】GDN・YDN(YDA)バナーサイズ一覧
11. アカウント設計を見直す
Goolge広告はAI機能が充実しており、構成を極力シンプルにして機械学習をフル活用できるアカウント設計でないと効果が出づらくなっています。
つまり、「サイト訪問後1日」「サイト訪問後7日」「サイト訪問後30日」のリストをそれぞれのグループに設定するのではなく、ひとつの広告グループで管理するのが効果的です。
広告グループ | オーディエンス |
---|---|
広告グループA | サイト訪問後1日 |
広告グループB | サイト訪問後7日 |
広告グループC | サイト訪問後30日 |
広告グループ | オーディエンス |
---|---|
広告グループA |
サイト訪問後1日 サイト訪問後7日 サイト訪問後30日 |
ひとつの広告グループに蓄積できるインプレッション数を増やすことで機械学習のスピードがあがり、配信効率を向上させることができます。
【運用事例】
下記は弊社の運用事例で、求人サービスを運営している弊社クライアントのアカウント構成を見直した前後の実績になります。
アカウント構成 | クリック率 | CVR | CPA |
---|---|---|---|
導入前 | 0.10% | 0.97% | 24,959 |
導入後 | 0.10% | 1.40% | 19,616 |
広告グループを細分化せず、データを集約するだけでCPAが改善していることが分かるかと思います。
詳しくは以下のブログで詳しく解説しています。
» リスティング広告のアカウント構成の基礎と注意すべきポイント
まとめ
本記事で解説した「リマーケティングの効果を見直す施策」は以下のとおりです。
【まとめ】
リマーケティングは、少し手を加えるだけで効果が改善することが多いので取り入れつつ、サードパーティCookieの規制について最新情報を追うことも重要になってきます。
今後もプライバシー保護の観点から、ブラウザの環境や個人情報の取扱いについては規制が厳しくなることが予想されます。
「【完全版】リマーケティングとは?基礎や仕組みを分かりやすく解説」というブログで、基礎に加えてサードパーティCookie規制への対策方法を書いているので、こちらもご参考ください。
というわけで今回は以上となります。